はじめに
みなさん。
指定した範囲の乱数を作りたい場合は、どうしているでしょうか。
今日は、指定した範囲の乱数生成の小ネタを紹介します。
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指定した範囲の乱数を作成したい(後編)
指定した範囲の乱数を作成したい(実戦編)
サイコロを考えてみる
整数の乱数を用いた例
さて、例えばサイコロを作りたいと思います。
サイコロの目は1~6ですね。
そして乱数生成器が用意されていると思います。
この乱数生成器は、4バイト=32ビットの一様分布する整数値が出力されるもので、
random32()と関数を呼び出せば、出力されるものとします。
( random32() は、C言語の乱数 rand()と似たような関数だと思ってください。 )
どのような、コードを思い浮かべるでしょうか。
恐らく最も簡単なコードは、次のようなコードです。
サイコロの目 = random32() mod 6 + 1
(mod 6 は、6で割った余りの数とします)
たしかに、「random32() mod 6
」で0~5の範囲の値を作成して、
1を足して、1~6の乱数が出ると思います。
実数の乱数を用いた例
今度は、実数の乱数生成器で、サイコロを作る話です。
この実数の乱数生成器は、64ビットのdouble型の実数を作成するもので
[0, 1) = {x | 0 ≤ x < 1} の乱数、つまり0以上、1未満の乱数を得ることができます。
randomf()と関数を呼び出せば、出力されるものとします。
( randomf() は、JavaScript の Math.random() と似たような関数だと思ってください。)
この場合も、どのような、コードを思い浮かべるでしょうか。
最も簡単なコードは、次のようなコードです。
サイコロの目 = floor(6 * randomf()) + 1
(floor() は、床関数です)
はい。
これも、たしかに、「6 * randomf()
」で[0, 6)の乱数を作成して、
床関数で0~5の整数値にして、1を足すことで、1~6の乱数が出力されます。
この考えでよいのか?
簡単で、すぐに乱数が欲しいという目的であれば、これまでの話は正しいと思います。
ただし、知っている方も多いかと思いますが、
本当に本当に正確な乱数を欲しい場合は、問題があるコードなのです。
何が問題なのでしょうか。
乱数生成器の問題点
整数の乱数生成器
まずは、整数の乱数を使用した場合です。
問題を分かりやすく考えるため誤差を大きくしましょう。
2ビットの乱数生成器(0~3までの4パターンの数字を出力する)random4()が用意されており、
ここから0~2まで、3パターンの数字を出力する乱数を作り出したいと思います。
この2ビットの乱数生成器の性能を表にまとめます。
乱数値 | 0 | 1 | 2 | 3 |
確率 | 1/4 | 1/4 | 1/4 | 1/4 |
それでは、先ほど同じような考え方で
y = random4() mod 3
を計算してみるとどうでしょうか
乱数値 | 0 | 1 | 2 | 3 |
y (3で割った余り) | 0 | 1 | 2 | 0 |
つまり、出力される0~2の値は、
「random4() mod 3
」の計算で作成すると、
下記のように0が出る確率が高くなってしまうのです。
残念な乱数出力結果1
y | 0 | 1 | 2 |
確率 | 2/4 | 1/4 | 1/4 |
実数の乱数生成器
今度は、実数の乱数生成器の話です。
「floor(6 * randomf()) + 1
」とサイコロを作成した場合、同じように偏りが生まれる問題があるのです。
浮動小数点型に限界があるのです。
一様乱数な 0 から 1 未満の浮動小数点を作成したとしても、仮数部のビット数分の種類しかないのです。
(ただ、出力値がdouble型ならば、
先ほどの、randomf() は、約2^52ビット=9007兆の数字のパターンを持っています。
これだけ大きければ実際は、問題はないと思います。)
分かりやすく考えるため、しょぼい乱数生成器を使用します。
2ビット整数の乱数生成器の話と同じように仮数部が、
2ビットの実数の乱数生成器 randomf4() を使用して、0~3の整数を作ってみましょう。
(randomf4() は、0から1未満を生成するが、0.00, 0.25, 0.50, 0.75 の4パターンしか出力されない)
この仮数部2ビットの実数乱数生成器の性能を表にまとめます。
乱数値 | 0/4 | 1/4 | 2/4 | 3/4 |
確率 | 1/4 | 1/4 | 1/4 | 1/4 |
それでは、先ほど同じように
y = randomf4() * 3 z = floor(y)
を計算してみるとどうでしょうか
乱数値 | 0/4 | 1/4 | 2/4 | 3/4 |
y (3倍した) | 0/4 | 3/4 | 6/4 | 9/4 |
z (床関数) | 0 | 0 | 1 | 2 |
つまり、出力される0~2の値は、
「random4() % 3
」の計算で作成すると、
0が出る確率が高くなってしまうのです。
残念な乱数出力結果2
y | 0 | 1 | 2 |
確率 | 2/4 | 1/4 | 1/4 |
おわりに
では、どうすればいいんじゃあって思うかもしれません。
まあ、普通に使用する分は、最初の話があったような方法で十分です。
ただし、使う人を選ばない乱数生成器を作成したいとか、
どのような乱数生成器の性能でも、しっかりした乱数を作りたいといった場合は、
工夫して上記の問題を解決する必要があります。
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